リスクマネジメントの強化が重要

利用者の安全を守り、質の高い介護サービスを提供するためには、事故を未然に防ぐための取り組みが不可欠だ。そのため、リスクマネジメントを強化し、組織的に事故防止に取り組む必要がある。
リスクマネジメントとは、事故などのリスクを把握し、組織的に管理することによって、事故を未然に防いだり、事故による損害を最小限に抑えたりすることである。介護現場では、転倒や誤薬、誤嚥、やけどなど様々な介護事故のリスクが存在する。これらのリスクを把握し、対策を立てることがリスクマネジメントの目的である。

具体的なリスクマネジメントの手法が、「ヒヤリ・ハット」事例を収集し、分析することだ。ヒヤリ・ハットとは、事故には至らなかったものの、事故につながる可能性があった出来事である。これらの事例を収集し分析することによって、潜在的なリスクが明らかになり、対策を立てることができる。
例として、入浴介助中に利用者が立ち上がろうとしてよろめいたが、介助者が支えたため転倒には至らなかったという事例があったとする。これはヒヤリ・ハット事例であり、この事例から、入浴介助中に利用者が立ち上がろうとするリスクがあることが分かる。対策としては、入浴前に利用者に立ち上がらないように声掛けをしたり、立ち上がり防止用のベルトを使用したりすることが考えられる。このように、ヒヤリ・ハット事例を分析することで、具体的な対策を立てられるようになるのだ。全ての介護事故の予防は困難なため、予防可能な範囲と困難な範囲を分けて対策を講じることも重要である。